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「誰かのために創る」ということ

私はぐい呑みを作る際に、いつも出会ってきた酒飲みの人たちのことを思いながら作っている。あの人ならこんなのを好むかな?とか、あの人に持ってもらえたら色っぽいなとか妄想しながら作るのはとても楽しい時間である。

最近子供たちへの出前授業でやきものを教えることがあり、テーマを「誰かのために創る」とした。
誰に、どんな思いで、何を作るのかを事前に決めて、思いを込めて作ってもらい、完成品をプレゼントされた誰かの感想もいただいて完結という授業である。ほとんどの子供たちはお母さんに感謝を込めて作ったが、中にはお父さん、お爺ちゃんに、友人に、頑張っている自分にという子供もいた。
心を込めて作ることはその子の作品であり、手作りの良さを感じてもらう良い機会でもあった。またプレゼントをして喜んでもらうことで作った自分も嬉しくなる。我々の仕事の根幹を感じてもらえる授業だった。
子供たちの真面目に真剣に誰かのことを思い作っている姿を見て、このことこそが日本工芸の普及への第一歩だと感じた。

この活動に共感いただき、京都髙島屋さんで「日本の伝統をつなぐ第一歩展」として、子供たちの作品と思いを展示していただいた。さらにパナソニックさんの協力を得てその記録を映像に残していただくこともできた。深く感謝したい。私は誰かと特定して作っているわけではないのだが、その先に必ず人がいることを忘れてはいけないと改めて思った。

「誰かのために創る」ということ

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